スポーツ整形外科医たこぼうBLOG

整形外科病院勤務、ときどきスポーツ現場でも活動するドクターのブログ

大腿骨近位部骨折の種類と手術 その1

大腿骨近位部骨折が生命予後不良疾患であることを下記の記事で書きました。

takobow.hatenablog.jp

 

今回は大腿骨近位部骨折の種類と手術術式について解説します。

 

大腿骨近位部骨折の種類

大腿骨近位部骨折は下の図のように分類されます。

f:id:takobow:20190831192339p:plain

 

近位部骨折のほとんどは手術適応となりますが、大転子頂部の単独骨折などごく一部に関しては保存的治療となることがあります。

それぞれの骨折でさらに骨折型や転位(骨のずれ)の状況によって細かく分類されます。

 

 

大腿骨頚部骨折の分類

大腿骨頚部骨折の分類で最もメジャーなものはGarden分類です。

 

f:id:takobow:20190831192441p:plain

 

Garden分類のⅠ型とⅡ型では骨接合術が、Ⅲ型とⅣ型では人工骨頭または人工股関節置換術が推奨されています。もちろん年齢や全身状態によって判断しますが、筆者の病院でも基本的にはGarden分類に応じて術式決定を行っています。

Garden分類Ⅰ型またはⅡ型で骨接合術を行う際には、骨折線の入り方によってインプラントを使い分けるべきとされており、その際に役立つのがPauwels分類です。

 

f:id:takobow:20190831192733p:plain

 

多くの場合はピン刺入術が行われます(Hansson PinやCCHSなど)が、水平線に対して50度以上の角度がついているPauwelsⅢ型の骨折では荷重時に垂直方向の剪断力が強く働くため、通常のピン固定では破綻しやすくなります。そのため、PauwelsⅢ型においてはCHSタイプのインプラントが推奨されます。

 

Garden分類Ⅲ型やⅣ型では、大腿骨頭への血流が途絶しやすいため、骨接合術の成績が芳しくないとされています。そのため、人工骨頭や人工股関節といった人工物に置換する手術が選択されます。

ただし、若い患者で関節を温存したい場合や、全身状態が高侵襲の手術に耐えられない場合は、転位の強い頚部骨折であっても整復して骨接合術を行うこともあります。

 

大腿骨転子部骨折の分類

大腿骨転子部骨折はEvans分類という分類法が有名でしたが、近年さまざまな分類法が提唱されています。整復位によって術後成績が変動することが分かっており、より安定した整復と固定を目指すというコンセプトのもとで分類されるようになったのです。

よく用いられる分類はEvans分類のほかにAO分類、中野分類、生田分類、AP3ML3分類、Jansen分類などがあります。術中に確認することのできる分類として最近では生田分類が重要視される傾向にあるようです。転子部骨折の分類はそれだけで記事が複数書けそうです。

いずれの骨折型であっても、髄内釘による治療が行われることが多いですが、CHSを用いる病院もあります。骨折型によって髄内釘の長さや種類を変えることもあります。

 

まとめ

①大腿骨近位部骨折は原則的に手術適応となる

②骨折型によって術式、インプラントを選定する