スポーツ整形外科医たこぼうBLOG

整形外科病院勤務、ときどきスポーツ現場でも活動するドクターのブログ

【論文抄読】時は金なり

今回は最近読んだ論文を紹介します。

労働時間内での無駄な時間は、経済的な損失となります。手術室においては、外科系医師が効率的に次々と手術を行うことで、病院の収益改善につながります。

 

Andrea  V. et al. Theater Cost Is £16/Minute So What Are You Doing Just Standing There? J Arthroplasty 31(2016) 22-25

https://www.arthroplastyjournal.org/article/S0883-5403(15)00729-9/fulltext

Abstract

この研究の目的は、手術室で特定の活動を行うのに要する時間を測定し、各活動を実行するための1分あたりのコストを計算することである。人工股関節および人工膝関節置換術中に整形外科研修生によって行われる15の行為を実行するのにかかる時間を計測した。アルゴリズムを開発し、そのアルゴリズムに準じて20人の患者の準備を行い、それにかかった時間を計測した。このアルゴリズムにより、全体の準備時間は人工股関節置換術で25.32%、人工膝関節置換術で27.60%(P <.0001)短縮され、それぞれ1例あたり84.32ポンドと93.44ポンドの経費節減となった。外科医と手術室スタッフの調整は、費やされる時間を短縮するために不可欠であり、これは手術室の効率を改善するのに役立つ。

 Open Accessではありませんので詳細を掲載することはできませんが、アルゴリズムとしては全員が待機することなく常に動くことを目標に、誰が何を準備して、いつ手洗いに行き消毒を始めるかなど事細かに順序が規定されています。「何もせずに待っている時間」をなくすようなプロトコルが組まれることにより、時間の短縮が行え、それがすなわち1例あたり100ポンド弱の経費削減となったのです。

 

筆者の病院でもそうですが、多くの病院で部屋の準備を待つ時間、患者が来るのを待つ時間、麻酔がかかるのを待つ時間、手洗いと着替えを待つ時間…と、誰かが何かを「待っている」とうのが常態化しています。

「待っている」時間を減らすようなプロトコルを作ることで労働時間短縮や経費節減に繋がることが示唆されます。