スポーツ整形外科医たこぼうBLOG

整形外科病院勤務、ときどきスポーツ現場でも活動するドクターのブログ

スポーツにかかわる人は絶対知っておくべきアンチドーピング規定

 ドーピングに関しては一般のニュースでも取り上げられるほどよく耳にする話題になっていますが、残念ながら毎年ドーピング違反により失格となるアスリートが存在します。

競技力向上のために故意に禁止薬物を使用するのは論外ですが、比較的多い違反としては、当該薬物が禁止されていることを知らなかった、あるいは禁止薬物が含まれていると知らずに使用してしまったという「うっかりドーピング」があります。

 

故意でないとはいえ違反のため失格となりますし、なによりスポーツにかかわる人間がルールを知らなかったり、自分が使用している薬に何が入っているか知らないというのは問題があります。このような「うっかりドーピング」を減らすためにこの記事を参考にしていただければと思います。

 

基本的事項はこちら

takobow.hatenablog.jp

 
禁止薬物・禁止方法は明確にリスト化されている。

どのような薬物、方法がドーピング違反にあたるのかは、The Prohibited Listという表に明確に記載されており、日本語訳もあります。

2019年分はこちら

https://www.playtruejapan.org/upload_files/tpl_2019.pdf

これらは少なくとも年に1度1月1日に更新されます。たとえば、2018年にはジメチルブチルアミンという一部のサプリメントに含まれている成分が禁止表に追加されたり、点滴の実施に際して「6時間当たり50mlまで」から「12時間当たり100ml」に変更になっていたりという変更がなされています。

 

なお、現在のJADA(日本アンチドーピング機構)の規定では、点滴を入院設備を有する医療機関での治療およびその受診過程、外科手術または、臨床検査の過程において正当に受ける場合には許可されており、無床診療所や病院外にて12時間当たり100mlを超えて投与してはいけないこととなっています。

 

アスリートは自分で自分を守らなくてはならない

アンチドーピング規定には様々な物質、方法が事細かに記載されていますが、すべての項目に共通して言えることは、「アスリートの自己責任となる」ことです。

何度も書くように「違反だと知らなかった」は一切通用しません。故意でないことを立証できれば失格期間を短縮できることもありますが、処分がなくなることはありません。特に、中身が何かよく分からないサプリメント健康補助食品は非常に危険です。ごく微量の興奮剤などが入っていて失格となることがあるのです。アスリートは自分の体に入れるもの似関して、すべて自分で責任を持たなくてはいけません。

 

医療者も研鑽を積むべきである

これまでに書いたように、スポーツ競技者に対しては使用できる物質、方法が規定されています。医療者がそれを知らずに処方しても、医療者は処分されません。全てアスリートの責任となり、プレーできなくなってしまうということを肝に銘ておかなくてはいけません。

もちろん、選手の生命維持、健康維持が最優先ですから、いざというときの治療をためらってはいけませんが、大勢に影響のない軽微な体調不良や外傷など緊急性の高くない場面においては、規定に沿った治療、処方をすることが求められます。また、self-limited disease(自然治癒する疾患)においては「医療的介入を行わずに自然経過をみる」という選択も有用です。

 

 

まとめ

・ドーピングの規定はたびたび更新されるため最新の情報を入手すべきである
・全ての行為はアスリートの自己責任である
・アスリートは自分を守るために勉強すべきである
・サポートする医療者も常に勉強してアスリートを違反から守らなくてはいけない