スポーツ整形外科医たこぼうBLOG

整形外科病院勤務、ときどきスポーツ現場でも活動するドクターのブログ

ドーピングについて 基本的事項のまとめ

スポーツにかかわる人であれば絶対に守らなければいけないのがアンチドーピングの規定です。

今回はアンチドーピングのルールが定まるに至った経緯や基本的なルールについて解説します。

 

ドーピングとは?

ドーピングとは

スポーツで成績を良くするために筋力や運動能力を高めることを目的として、薬物を使用したり物理的介入を行ったりすること。それらを隠ぺいするための行為を含む。

という定義がなされています。

物理的介入というのが分かりにくいかもしれませんが、筋トレやマッサージという意味ではなく、輸血(自己血を含む)や検査用の尿や血液のすり替えを意味します。

禁止されている薬物や禁止されている介入方法に関しては明確にルールが定められており、このルールを破ると「ドーピング違反」になります。また、指定された検査を拒否することや、指定選手においては居場所情報の未提出、居場所情報違反など、ドーピング検査を正しく受ける義務に反する行為もドーピング違反となります。

 

ドーピングの歴史

記録に残っている最古のドーピングは、1865年に遡り、1886年には自転車競技でドーピングを行った選手が死亡したという報告がなされています。その後、競技会ごと、あるいは競技団体ごとにアンチドーピングのルールが作られてきましたが、世界的な共通ルールができたのは高々20年前、1999年に世界アンチドーピング機構(WADA)ができたときでした。

オリンピックでは1960年のローマオリンピックでドーピングによる死亡例が生じたため取り締まりを行うこととなり、禁止物質のリストを定めて1968年からドーピング検査を行うようになりました。

日本においては、WADAの結成から2年後の2001年に日本アンチドーピング機構(JADA)が結成されています。その後、国会でも法律を作成する方針となり、2018年には「スポーツにおけるドーピングの防止活動の推進に関する法律」が施行されました。

ルールはとても細かく決められている

World Anti-Doping Codeというルールが2004年に定められており、2009年、2015年にそれぞれ改訂されています。現在は2021年の改訂に向けた作業が行われています。

また、禁止物質、禁止される方法に関してはProhibited Listに細かく規定されており、このリストは少なくとも1年に1回更新されることになっています。

アスリートは常に最新の情報を入手し、意図せぬ違反をふくめてドーピング違反を起こさないよう努める必要があります。

JADAのウェブサイト

www.playtruejapan.org

には最新の情報が掲載されています。

 

最新の情報を熟知しておかなければ、意図せぬドーピング違反を起こすことにつながります。最近ではテニスプレーヤーのシャラポワが、2016年1月の全豪オープン期間中の検査でメルドニウムの陽性反応が検出されて選手資格停止処分となりました。メルドニウムは2016年1月から禁止リストに入っていたのです。

ルールを知らないことによって1年以上も出場停止となることがありますので、選手の皆さんは自己責任としてしっかりとルールを知っておく必要があるのです。

 

 

ドーピング検査の実際や、細かい規定に関しては別途記事を作ることにします。