スポーツ整形外科医たこぼうBLOG

整形外科病院勤務、ときどきスポーツ現場でも活動するドクターのブログ

大病院には紹介状を持っていくべき4つの理由 Part 1

医療機関は、地域の中核となる大病院から地域に根付いた開業医(いわゆる「町医者」)までさまざまな規模のものがあります。これらの施設にはそれぞれに役割があります。最近では大きな病院を受診する際には必ず紹介状を持って行きましょうといわれていますが、今回は病院に勤務する医師が感じている、紹介状を持参すべき理由について記事にしました。

 

 

先にまとめておくと、大きな理由としては下記の4つがあります。

 

医療機関の役割分担(公式的な理由)

②選定療養費がかからない

③初診でも専門医の予約を取得できることがある

④紹介患者として丁寧な診察を期待できる

 

今回の記事では①について詳しく書き、②以降の詳細についてはそれぞれ別途記事にしますが、多くの場合は紹介状を持参することにより患者さんと医療機関側双方にメリットがあるのです。

 

そもそも、「病院」というのは「医療法」という法律で明確に定義されており、「病床(入院用のベッド)が20床以上」の医療機関が「病院」になります。病床がない、あるいは20床未満の医療機関は「診療所」となります。なお、「○○医院」や「△△療養所」などの名称には明確な規制はありません。全ての病院や診療所には医師がいます。

 

日本はもともと病院受診がフリーアクセス(障壁がなく患者が希望する病院に自由に受診できる)でしたが、医療者の負担が偏在したり、患者さんの重症度に合わせた対応がしづらくなったりするという問題が出ていました。

そのため、国の方針として軽傷の疾患や慢性疾患の初期には地域の診療所での診療を行い、必要に応じて高度な医療を行う病院に紹介して精密検査や集中治療、手術を行うという役割分担が推奨されるようになりました。

 

これを聞くと、「初めから大病院に行けばしっかり診てもらえてそのまま精密検査もしてもらえるのだから、地域の診療所は必要ないのでは?」と感じる方もいるでしょうが、実はその考えは大きな間違いなのです。

第一に、大病院を受診したことのある方は体験されているかもしれませんが、大病院はたいてい待ち時間が途方もなく長くなります。筆者の勤務する病院では、予約なし患者の当日受付は10時半までと決まっていますが、その時間内に受付した患者さんの診察や検査がすべて終わって患者さんが家に帰るのは16時ごろということが日常茶飯事です。中にはそのまま入院、手術となる患者さんもいますが、何時間も待って受診する患者さんのほとんどは軽傷で、痛み止めやシップ、あるいは投薬なしで経過観察のみとなります。

当然、薬はどの医療機関で処方してもらっても中身は同じですので、得られる治療効果も同じです

 

第二に、先ほど書いたように患者さんが長時間待っているということは、その間に医療者は膨大な患者さんを診察しています。そのため、どうしても個々の患者さんを平均的な水準に当てはめて考えてしまい、患者さん個々人の社会的背景(同居の家族構成や家の環境、職業、今後の人生設計など)を十分考慮することができません。この点において、地域の診療所に大病院が勝つことは不可能なのです。

 

さらに、病院に行くこと自体が一定の危険を伴うということがあります。具体的には、病院で肺炎やインフルエンザ、胃腸炎などをもらう可能性があるということです。大病院には1日数千人の患者が受診しており、感染症の患者さんも少なからずいます。感染には様々なうつり方があり、いくら病院とはいえそれら全てを予防することは困難で、むしろ患者さんの多い環境はかえって危険である可能性もあります。

 

これらの理由から、国として病状に合わせた受診を促す方向に動くこととなりました。その政策の一つとして、「選定療養」が導入されたのです。